2013年12月17日火曜日

Small Thief

バラナシ(ベナレス)を離れる前日に当たる昨夕は、道で偶然会った日本人女性と18時からガンジス川沿いで毎日行われている儀式を見学に行った。
運がよかったというものだ。毎日に行われているとはいえあまり興味がなかったので通り過ぎるだけでしっかり見学したことはなかったから。

なかなかよい光景だった。
しかし、翌日に当たる今日はやはり喉の調子が悪い。むむむ。
そんな喉を鳴らしながら朝道を歩いていたら、ベンガリートラでちょっとした人だかりができていて8、9歳くらいの小僧が大人にガンガンにぶん殴られていた。
間断なく張り手が打ち込まれ、子供が泣き出しても止まらない。いや、泣き出した時に聴衆に「もっとやっていいか」と確認のようなものをとったが、即座にOKの反応があったので、容赦なくさらに本気で殴り始めたという感じか。
最初は親子かなと思ったが、親子でないことは確かと見えた。

往年のプロレスラー、キラーカーンに髪の毛を生やしたような大男で、動きも破壊力もキラーカーンばりだ。
近くにあった店の店主に「何があったのか」と英語で尋ねたところ、「チョリ」とヒンディー語で返ってきた。
その子供の外見から多分「チョリ」とは盗みのことだなと推察した。
容赦なしというか手加減なしというか、小僧が泣き喚きながら「許してください」と懇願しても手を緩めることはない。いく分離れたところにいたのにゴツ、ボコと生々しい音が聞こえてくる。

しかし、聴衆皆が見届け人のように成り行きを見守っている。
牛や犬を打つかのごとく手加減はなし。
幼い悪党も泣き喚く姿はただの子供。
近ごろバラナシの小悪党にイライラが募っていた僕は、日頃のカタルシスを晴らすかのように「徹底的にやっちまえ。悪が栄えた試しなし」と凝視した。

殴ったところでこの手の幼い悪人の精魂が叩き治るわけではないと思う。今泣いている間だけは子供に戻りはするが、10年後も盗っ人かそれに類することをやっているのじゃないか。かといって、叩かなかったからといって治るわけでもなし。
言うなれば、10年20年30年後の咎を前借り成算してるような具合じゃないか。

そしてついにはボディスラムさえ炸裂。小僧は泣き声さえ出ないほどのグロッキーになった。
するとキラーカーンは「あんたも気をつけろよ」と群衆の一人にその肩掛けカバンを指差しながら英語で告げた。
どうも物を盗まれたのはキラーカーンではなく、その見た目はインド人だがヒンディー語が話せない人のようで、キラーカーンは通りの制裁代理人か何かだったということだ。

推察するに、この手の貧しく汚れた風体の幼い盗人は社会の底辺層に位置するので、何をやったところで許されるっぽい。実のところ、絶対的弱者なのだろう。
僕のバラナシでのイライラも吹き飛ぶような凄まじさだった。

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